Artist

藤崎孝敏
(Cauvine)

“上辺の虚飾をことごとくそぎ落とし、対象の本質を鷲掴みにえぐり取って、そのまま油彩の生々しい筆跡に転化させた──その類を見ない表現を一言で語れば、こんな形容になるだろうか。
30代初めに単身渡仏して、モンマルトル界隈を転々としながら、荒々しい激情と憂愁の詩情を併せ持つ、独自の油彩画を確立する。以降、各地のギャラリーにおける個展活動を通して、熱烈なファンを生み続けて来た。
表層の美麗ばかりがもてはやされる現今の美術シーンで、小手先の技芸よりは一貫して血の通った内的な表現を指向し、ダイレクトに見る者の肺腑を衝くその作風は、一度見たら忘れられないようなインパクトをはらむ。ある種反時代的とも言えるその強烈な個性は、反面見方を変えれば、油彩にしか出来ない油彩ならではの表現を、純粋に真摯に追求したものと言えるだろう。
現在はブルターニュに在住、徹して「描く」という行為を体現する、現代では稀な真実の画家である。”
(文:山口画廊 / 山口雄一郎)


1987 渡仏 パリ市内のホテルを流転
1988 モンマルトルに居住
1993 回顧展 /アートミュージアム銀座
   画集「CAUVINE・1985~1993」刊行
   ピガールのアトリエに転居
2002 個展/東急Bunkamuraギャラリー(渋谷)
   詩画集「刈り取られた慈しみ」発刊
2005 ベルギーの田舎に転居
2007 個展/東京丸善(丸の内)
2010 個展/バサディナ美術館(三島)
2011 ノルマンディーにアトリエを移す
2012 ブルターニュにアトリエを移す
2018 美術展 「藤崎孝敏の芸術」/沼津市立美術館モン ミュゼ(沼津)

【コレクション】
バサディナ美術館(静岡)
福岡市美術館西本コレクション(福岡)
信濃デッサン館(長野)

33歳頃 パリのアトリエにて

CONTRIBUTION

設展の開設、おめでとうございます。
静岡県函南市に足を運ばずにCauvine画伯の絵を見られるのは本当に嬉しい限りです。
私がCauvine画伯の絵に初めて出会ったのは比較的新しく約四年前でした。当時、ギャラリーで仕事をしていた私はギャラリー巡りが一種の仕事。ある日、立ち寄ったギャラリーで見た一枚のフランスの片田舎の風景画。その絵を見た瞬間、衝撃が心に刺さり、足が止まり、どうにも動けなくなりました。それが私にとっての運命的な出会い。その絵は今、私の部屋に飾られていて、私の宝物の一つです。今後、銀座に行くのがとても楽しみになりました。
より一層のご活躍を期待しています。

9月24日 スイスにて
エッセイスト 林 日南子

Cauvine先生の油彩画に出会ったのは数年前、とある美術商が「とにかく素晴らしい作家がいる」と強く推薦するので、すぐさまひとり個展に訪れたのがきっかけだった。銀座のギャラリーに足を踏み入れた瞬間、初めて目にする先生の作品を前に、どこか言い知れぬ郷愁を感じながら、詩的な Cauvineの世界へと誘われていった。

先生の手掛ける重厚な油彩画は、蛍光灯を煌々と灯す日本の住環境にはない光と、そこに流れる空気感が巧みに表現されている。かつては、日本でも障子越しの光を楽しんだり、雨音や風の音を感じる文化があったのだが、いつしか自然と織りなす芸術を軽視するようになってしまった。

そう、我々が失ってしまったそんな感覚を思い起こさせてくれる。それゆえ、先生の作品にはどこか懐かしさを感じるのだろう。

我々は便利な時代に生き、不便なこと、待つこと、分け合うことができなくなっている。そればかりではなく、ないものを別のもので補い、未知のものに想像を膨らませ、日々の生活に潜む小さな“美”と“幸福”に感謝することまでも忘れ去ろうとしている。

こんな時代に出会った、“懐かしくも新しい” Cauvineの世界から今後も目が離せない。

学校法人東京ビジネス学園 理事長
株式会社ジーアイシー 代表取締役
吉岡 公珠

私が藤崎さんと知り合うキッカケは、時間調整のため知り合いのギャラリーを訪れたことにあります。
恥ずかしながら何の考えもなく展示室に入ってみると一匹の狐の絵が掛けてありました。その眼があまりにも異様で凄惨に思われ釘付けになったのを昨日のように思い出します。(あとで画伯に聞くと狐狩りで翌日には殺される運命にあった狐だったそうです。)
そのあと奥の部屋に入っていくと画伯の絵筆を持つ自画像が掛けてありました。これまた彼の絵に向き合うストイックな生き方が万感の想いとともに現れているようで、写真では表現できない凄まじさがあり胸に迫ってくるものがありました。
そのあとです。突如自分は今どんな顔をしているのか画伯から見るとどう映ってるのか見てみたいというようなとんでもない欲望が出てくるほど画伯の絵は私の心を鷲掴みにしてしまいました。今から思えばよくそんなこと思いついたなと思うのですがそれぐらい画伯の絵には語りかけてくる魂があるように感じます。これは実物と対峙しないと感じることはできないものです。
今回アクセスに便利な銀座に常設展示場ができ、多くの人が魂の震える経験を共有できることになったことは誠に喜びに堪えないことと思っております。

ユニカ食品株式会社 代表取締役
西村雅彦

私はもう3 0年以上も前、 銀座の画廊で孝敏の作品と出会い、同時に孝敏とも会って会話をした。その時、孝敏の傍らには足のきれいな美女がいたと思うが、もうその美女の顔は忘れてしまった。 その後、毎年孝敏の展覧会に行き、今年は孝敏がどのような絵を描くのかいつも楽しみに鑑賞している。
私はその頃から1 0点程孝敏の作品を購入し、 そのうち数点を私の法律事務所の会議室に飾っている。
私はもう数十年も孝敏の絵を事務所に飾っていることになるが、孝敏の絵は飽きない。気持ちが塞いだ時に、孝敏の絵はふと目に留まる。

2020年9月29日
長谷川国際法律事務所
長谷川 純

The thread

It started with the cat coming out of a shop somewhere in France – “Vente et reparation de Bijoux”. I thought of my tiger cat; he has always found his way back to me. Then it was the table, that mixture of wildness and handmade work, the glass (of coffee?) and the croissant – “Petit Déjeuner”. The girl standing at the door of a café, intimations of snow. I realized someone at a distance can send us messages. There are invisible threads between people, in a world without borders of any kind.

Then there was the atelier. The window and the rain outside, the brushes and the tubes of paint, the self portrait on the wall. The cat under a working table. The girl getting dressed with an expression of desire on her face. The silent presence of the paintings at night.
The atelier transfigured: light, color, stars, butterflies, maybe fireflies. Faces, landscapes, animals, things. Flowers, hydrangea and roses; abandoned roses. Everything carried its darkness behind. When I stared at the paintings, I remembered Japanese words I had learnt with the poet Jaan Kaplinski: “yugen, sabi and mono-no-aware – obscurity, mystery and charm or sadness of things.”

I wonder if Cauvine and I will ever meet. Maybe in a café in Paris. But I know we have already met, two years ago. In that continuous world where my cat keeps coming back to me. In that continuous world where beauty and life come back once and again from the darkness. And there are roses. So many roses.

Ana Teresa Pereira

Ana Teresa Pereira is a Portuguese novelist. She was born in Funchal. She published her debut novel, Matar a Imagem (Killing the Image), in 1989. She has written more than 20 books.
2017  Oceanos Prize
Ana Teresa Pereira-wook.pt

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